母親用と自分用に果実をより分けていたとき盗賊に襲われるも、親孝行ぶりに免じて解放され、お土産まで貰った蔡順。
画像は「ARC古典籍ポータルデータベース」より
蔡順 拾椹供親
後漢の蔡順字は君仲は。汝南の人なり。幼少にて父にはなれ。母につかへて。孝を尽せり。此時王莽といふ逆臣。天下をぬすみて。兵乱うちつづき。飢饉しければ。母の養のために。椹(くはのみ)を拾へり。其器を二つ持て。実の赤きと黒きと。別にして盛るを。赤眉の賊といへる盗人ども見て。別々にするは如何なる事と問ふ。蔡順答て。 黒きは熟して。味甘き故。母の養ひに供え。赤きは熟せざるゆゑ。己が食とするといふに。さしもの悪賊も。孝心を感じて。米二斗牛の片ももを与へて去けり。其後母死していまだ葬ざるに。隣家より火出て。のがれがたく見へければ。蔡順。棺を抱き。哭号(なきさけ)び。天にいのりければ。火遂に蔡順か宅を越して。他の家にうつりけるとなん。諸人其孝感の奇特をたふとみけり
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奇特は火事を消すのではなくて、代わりに他の家を燃やす方向へ向かうという奇特。
盗賊団はもう少し襲う相手を選ぶべきだと思うの。高そうな服を着ている人とか、大きなお屋敷を狙うとか。