2018-08-06 女庭訓・9 曽參 曽參(そうしん) 書籍/女庭訓(渓斎英泉1843) 曽參 齧指痛心 「指を噛めば心(むね)を痛ましむ」 曽參ある時山中へ薪を取りに行き侍り 母留守にいたりけるに 親しき友来たれり 是にもてなしたくおもへども 曽參はうちにあらず もとより家貧しければ かなはず曽參が帰れかしとて みづから指をかめり 曽參山に薪を拾ひいたるが 俄かに胸騒ぎしけるほどに 急ぎ家に帰りたれば 母ありの姿をつぶさにかたり侍り かくのごとく指をかみたるが 遠きに こたへたるは一段孝行にして 親子の情深きゆゑん也 惣じて曽參の事は人にかはりて 心と心との上のことをいへり 奥深きことはりあるべし