二十四孝に会いに行く!

中国の親孝行な人たち・二十四孝に関するものを紹介していきます。

書籍/御伽草子 二十四孝・12 董永

天女が機織りボランティアに来てくれた董永。

ボランティア期間は終了し、織姫はお連れの二人と天に帰ります。

国立国会図書館デジタルコレクションより

董永

葬父貸方兄 天姫陌上迎
織絹償債主 孝感尽知名

董永は。いとけなき時に母にはなれ。家まどしくして。常に人に
やとはれ。農作をし ちん(賃)をとりて日を送たり。
父さてあしもたたされば。小車をつくり父を乗て。田のあぜにをいて養たり。
ある時父にをくれ。葬礼をととのへたく思ひ侍れども。
もとよりまどしけれは叶はず。されば料足十貫に身をうり。葬礼をいとなみ侍り。
偖(さて)かの銭主のもとへ行けるが。みちにて一人の美女にあへり。
かの董永がつまになるべしとて。ともに行て。一月にかとりの(の)絹。
三百ひき織て主のかたへ返したれば。主もこれをかんじて董永が身をゆるしたり。
其後婦人董永に云様は。我は天上の織女なるが。汝が孝をかんじて。
我をくだしておひめをつくのはせりとて。天へぞあがりけり

バイバイ董永。

天女を引き留める魅力はなさそうな董永。

 

福島県・烏峠稲荷神社の董永。左側、雲の上に乗っている人が天女ですね。中央が董永、右側が童子

書籍/御伽草子 二十四孝・11 楊香

父を守るため、虎にも臆せず立ち向かう勇敢な楊香。

国立国会図書館デジタルコレクションより

楊香
深山逢白額 努力搏腥風
父子倶無恙 脱身纔甲中
楊香はひとりの父をもてり。ある時父とともに山中へゆきしに。
たちまちあらき虎にあへり。楊香父のいのちをうしなはんことをおそれて
虎を追さらんとし侍りけれども。かなはざる程に。てんの御あはれみをたのみ。
こいねがはくは。わがいのちをとらにあたへ。父をたすけて給へと。
心ざしふかくして。いのりければ。さすが天もあはれとおもひ給ひけるにや。
今までたけきかたちにて。とりくらはんとせしに。虎にはかに尾をすべて
にげしりぞきければ。父子ともに虎口のなんをまぬがれ。つつがなくいゑに
帰りはんべるとなり。これひとへにかうかうの心ざしふかきゆへに。
かやうのきどくをあらはせるなるべし

ーーー

 

両手を挙げて虎に挑む楊香と我関せずのお父さん。

 

御香宮神社の楊香。

 

書籍/御伽草子 二十四孝・10 唐夫人

彫刻にもよく取り上げられる唐夫人。

国立国会図書館デジタルコレクションより

唐夫人
孝敬崔家婦 乳姑晨盥梳
此恩無以報 願得子孫如
唐夫人は。しうとめ長孫夫人としたけ。よろつしよくじ(食事)。
は(歯)にかなはざれば。つねに乳をふくめ。あるひはあさごとに
髪をけつり。そのほかよくつかへて。数年やしなひはんべり。
ある時長孫夫人わづらひつきて。このたびはし(死)せんと思ひ。
一門一家をあつめていへる事は。わが唐夫人の数年のおんをほうぜずして。
いましせん事のこりおほし。わが子孫唐夫人の孝義をまねてあるならば。
かならずすゑもはむじやう(繁昌)すべしといひ侍り。
かやうにしうとめにかうかうなるは。古今まれなるとて。
人みなこれをほめたりと。さればやがてむくひてすゑはんじやうする事
きはまりもなくありたるとなり

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衛生的にも、子育て環境的にも、女性の尊厳的にも問題多そう。

 

練馬区長命寺の唐夫人

 

書籍/御伽草子 二十四孝・9 姜詩

姜詩というより、姜詩の奥さんが主役だと思うの。

国立国会図書館デジタルコレクションより

 

姜詩の母親。どこそこのおいしい水が飲みたいだの、魚を生で食べたいだの贅沢を言います。姜詩は実の息子なんだから水汲みなんか自分がやればいいのに、厄介事は妻に押し付けます。で、姜詩は親孝行でした、なんて奥さん割に合わない話よね。

姜詩の奥さんは大抵柄杓を持って水を汲もうとしています。

 

飯綱神社の姜詩。柄杓と桶と鯉二匹。

 

岩﨑家廟堂。姜詩の奥さんが水汲みしているところを姑が見張ってます。やーねー。

書籍/御伽草子 二十四孝・8 老莱子

テキストを入力していて物悲しくなる、老莱子。

国立国会図書館デジタルコレクションより

老莱子
戯舞学嬌癡 春風動綵衣 
双親開口笑 喜色満庭圍
らうらいしは。二人のおやにつかへたる人なり。
されば老莱子七十にして。身にいつくしき衣をきて。
おさなきもののかたちになり。舞戯。又おやのためにきうじをするとて。
わざとけつまづきてころび。いとけなきもののなくやうになきけり。
このこころは。七十になりければ。としよりて。かたちうるはしからざるほどに。
さこそこのかたちを。おやのみ(見)給はば。わがみのとしよりたるを。
かなしくおもひ給はんことをおそれ。またおやのとしよりたると、おもはれざる
やうにとのために。かやうのふるまひをなしたるとなり

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親のために、変な気遣いをして踊る老莱子。

黙って老莱子を見つめる両親。複雑な思いが去来していることでしょう。

太鼓叩いている子がうちの孫だったらな~と思ってるのかもねー。

 

千手院観音堂の老莱子。

 

書籍/御伽草子 二十四孝・7 王祥

氷を体温で溶かして鯉を捕まえる漁法(?)を編み出した王祥。

国立国会図書館デジタルコレクションより

王祥

継母人間有 王祥天下無
至今河水上 一片臥氷摸
王祥は。いとけなくして母をうしなへり。父またつまをもとむ。
其名を朱氏といひ侍り。けいぼのくせなれば。父子の中をあしくいひなして。
にくまし侍れ共。うらみとせずして。けいぼにもよく孝行をいたしける。

かやうの人なる程に。本の母冬のきはめてさむき折ふし。なま魚をほしく
思ひける故に肇府と云所の河へ。もとめに行侍。されども冬の事なれば。
こほりとぢて。いを(魚)みえず。すなはち衣をぬぎてはだかになり。
こほりの上にふし。いをなき事をかなしみゐたれば。かのこほりすこし
とけて。いを二つおどり出たり。則取て帰母にあたへ侍り、是ひとへに
孝行のゆへに。そのところには。毎年人のふしたるかたち。こほりのうへに
あるとなり。

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このお話、「継母が意地悪だった」というエピソードはどうしても必要だったのかしら。

「いとけなくして母を失った」王祥の、生母に鯉を食べさせたときのお話のはずなのに氷上の王祥はどう見てもおじさんです。いとけないおじさん。

 

上田市妙見寺の王祥。

書籍/御伽草子 二十四孝・6 曽参

母と子の強い絆のお話。曽参。

国立国会図書館デジタルコレクションより

曽参

母指纔方噛 児心痛不禁
負薪帰未晩 骨肉至情深
曽参ある時山中へ薪を取に行はんべり。母留主にゐたりけるに。
したしき友来れり。
これをもてなしたくおもへども。そうしんはうちにあらず。
もとより家まど(貧)しければかなはず。曽参がかへれかしとて。
みづから指をかめり。曽参山に薪をひろひゐたりが。
にはかにむなさはぎしけるほどに。いそぎいゑにかへりたれば。
ははありすがたをつぶさにかたり侍り。かくのごとくゆびをかみ
たるが。とをきにこたへたるは一たん(一段)かうかうにして。
親子のなさけふかきしるしなり。そうじて曽参のことは。人に
かはりてこころとこころとのうへのことをいへり。
おくふかきことはりあるべし

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急な来客に狼狽える母。曽参早く帰ってきておくれ、という母の祈りが息子に通じ、曽参は飛んで帰ってきました。さて客はどうなったのか気になります。

輪王寺 糸割符燈篭の曽参。左右反転してますがよく似てますね。