14番~。曾参~。
曾参そうしん
曾参ある時山中へ薪をとりにゆき侍り。母留守にゐたりけるに い(し)たしき友きたれり。これにもてなしたく 思へども 曾参はうちにあらず。もとより家貧しければ かなはず。曾参がかへれかしとて 自ら指を噛めり。曾参山に薪を拾ひゐたるが にわかに 胸騒ぎしけるほどに 急ぎ家に 帰りたれば母ありすがたをつぶさに語り侍り。かくのごとく指を噛みたるが 遠きにこたへたるは 一段 孝行にして しんし(親子)の情け深きしるしなりと 惣じて曾参のことは 人にかはりて心と心との上の事をいへり。奥深きことはりあるべし。
ありすがた・・・有様。
曾参の肩には薪。息子の帰りを待つ母親はしっかり指を噛んでます。
現代の携帯電話の有難さを感じます。