呉猛(ごもう)
晋の代に呉猛といへる人八歳のころより親に孝あり 家もとより貧しかりしとなり 榻(とう)とは臥床のせまきを云なり ねところの台なり 帷帳とは「かや」の類なり 貧なればさるものなし つねに夏の夜は蚊おほく集まりきたるを 呉猛これをおはず ほしいままに …
呉猛 恣蚊飽血「蚊にほしいまま血を飽かしむ」 呉猛は八歳にして孝ある人也 まづしくしてよろづ 心にたらざりけり されば夏になりけれども 帷帳なし 呉猛みづから思へり 我が衣を脱ぎて親に着せ わが身はあらはにして 蚊にくはせなば 蚊も我身を食はば親を助…
呉猛 恣蚊飽血 「蚊に ほしいままに 血を飽かしむ」呉猛はいづれのときの人といふを知らず 八才にして 孝行の名 世に聞こへたり その家はなはだ貧しくして 夏の夜 蚊帳のてあてなし 父母蚊に悩みたまはんことをおそれ あかはだかになりて 父母の かたはらに …
呉猛は晋の世、濮陽(ぼくよう)の人なり。幼き時より孝行の聞こへあり。年八歳のとき、夏にいたれども家貧しうして蚊帳もなく、よろづ心に任せざれば我が衣を親に着せ我は赤裸になりて、その傍らに伏し蚊に飽かしめて更に払はず。払へば親の方へ蚊の行かん…