父を守るため、虎にも臆せず立ち向かう勇敢な楊香。
国立国会図書館デジタルコレクションより
楊香
深山逢白額 努力搏腥風
父子倶無恙 脱身纔甲中
楊香はひとりの父をもてり。ある時父とともに山中へゆきしに。
たちまちあらき虎にあへり。楊香父のいのちをうしなはんことをおそれて
虎を追さらんとし侍りけれども。かなはざる程に。てんの御あはれみをたのみ。
こいねがはくは。わがいのちをとらにあたへ。父をたすけて給へと。
心ざしふかくして。いのりければ。さすが天もあはれとおもひ給ひけるにや。
今までたけきかたちにて。とりくらはんとせしに。虎にはかに尾をすべて
にげしりぞきければ。父子ともに虎口のなんをまぬがれ。つつがなくいゑに
帰りはんべるとなり。これひとへにかうかうの心ざしふかきゆへに。
かやうのきどくをあらはせるなるべし
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両手を挙げて虎に挑む楊香と我関せずのお父さん。
御香宮神社の楊香。