蔡順。桑の実を青いものと完熟したものとを分けてたために命拾いした人。
1819年 葛飾戴斗 二十四孝図会 The British Museum所蔵
蔡順
黒椹奉親闈 啼飢涙満衣
赤眉知孝順 牛米贈君帰
蔡順は除南といふ所に住り父にはなれて母をやしなふ
その頃王まうといふもの乱をおこし天下みだれて
きゝんとなりけるゆへ食事にとぼしく、母をやしなふ
たよりすくなく桑の実を拾ひとりて食じのたよりとしける、
世の中乱れてより人を殺しはぎとりなどしてせいするものなく
ぬす人あまた蔡順を追来り、順が桑の実のじゆくしたると
じゆくせざるとをひろい分るをいぶかしみ、そのゆへを
たづねければじゆくしたるは老たる母の食にあたふなりと答へける、
盗人あはれみて米二斗牛の足壹つあたへけり、順辞すれ共
ぜひに恵ければ悦持かへり母とひとしく食しけるに、いつ迄
食しても米牛共につきざりしかば一期の間腹に満りとぞ
是孝行のしるしなり
ーーー