父親が快適に寝られるように、布団を仰ぐ黄香。
ARC古典籍ポータルデータベースより
黄香
江夏安陵といふ所の人なり 老荘のみちを。まなび。又はふん(文)をよく書し人也
九才にして母にをくれ父に孝をつくせし人也
冬月温衾煖 夏天扇枕涼
児童知子職 千古一黄香
冬月には衾を温て煖にしとは冬のさむき時には父の寝たうく(道具)を。
我身にて。あたためて寝させたてまつる也。
夏天には枕をあふひで涼くすとは。夏のあつき頃は父の枕床をあふき涼くする也。
児童なれ共 子の職をしれりとは おさなき童なれども。子としては。
おやに孝行をする道をまもれるといふ心なり
子の職をしれりとは孝行は子のためには職のやうなる物也
職はしよざいの事なり。
千古一黄香とは其年九つなどにてかく孝の道を知もの千古のいにしへも今も
さらにたぐひなき事也とほめたる心なり。
一とは黄香一人にとどめたりといふ心也
▲されはおさなき心にためしなき事なりとて。たいしゆ(太守)りうけんといふ人
都に札をたてて。黄香が孝行なる事をかきあらはして世上の人にみせしめけり。
それよりして天下にかくれなく。其時の御門和帝きこしめして。いとけなきものの
孝の道をしれりとてほうびをたまはりけると也
誠の心切なるときは。天あきらかにこれをしり。
悪心有時は天人をして是をいましむとは。古人の言葉なるをや
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