二十四孝に会いに行く!

中国の親孝行な人たち・二十四孝に関するものを紹介していきます。

書籍/二十四孝諺解・1 大舜

トップはやはりこの人。大舜。右ページには耕作をする大舜、左のページにはお迎えの車がやってきたところが描かれています。

ARC古典籍ポータルデータベースより

大舜

父は瞽叟とて盲目也 弟は象(せう)とて奢第一のいたつらもの也。
母はかたましき人にて心ひがみたる也 然とも舜は孝行第一にして。
つらき父母を。すこしもうらみず。かへつて我身をせめて。父母かく我を
にくみ給ふは。孝行のあさきゆへ。天我をいましめ給ふかと。
地にたふれかなしみ給ふと也。かかる孝行の徳によりて民の身として
王位に。のほり給ふ。大の字を付る事は。聖人にてましますと。
貴(たつと)みて書く也

隊々耕春象 紛々耘草禽
嗣尭登宝位 孝感動天心

此詩は。いまだ民にてまします時の事を作る也
此時の名は重花と申也
二十より内也 舜王となり給ふときは三十三の御年なり。

隊々とは象がむらかり田をかへすを云なり

春に耕とは。二月の比 田をかへすゆへ春といふ也

紛々として草をくさぎる鳥とは。
ふんふんとは物のたくさんなる事也 鳥があまた来りて草をとる也
孝行心をかんじて禽獣までが合力をするとほめたる心也

尭につゐで宝位にのほるとは尭王八人の御子あれども。
万民をめぐむべき人をえらみ御位をゆつらんと。もとめ給ふに
舜の孝行天下にかくれなければ則(すなはち)王位をゆつり給ふ
是を尭に嗣といふ也 

宝位とはけつかう成 御くらゐといふ心也。

孝感天心を動かすとは。
孝行の心をかんじて天道より位をさづけ給ふといふ心也

誠に父母ともに。あくにんにて弟の象と心をあはせ。
舜をころさんとせし事。たびたび也。ある時は。くらの。
屋ねをふかせ。下よりやきころさんとし。
ある時は井をほらせうづみ。ころさんと。しけれども。天のめくみにて。
かねてより知けれは笠をもつて屋ねよりとひ。ぬけあなを。こしらへ。
わきより出て。いよいよ孝行をつくし給ふにより
此事天下に。かくれなけれは。尭王御幸ありて。舜の孝行の
徳をご覧じ。蛾皇女英の二人の御娘を后にそなへ御くらいをゆつり給ふ也

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龍ヶ崎市八坂神社の大舜。合成写真です。

象より馬の存在感が強烈。主役のはずの大舜は右下にちょこっと鍬を担いだ姿が見えてます。

上の挿絵とは馬車の造りや人物に若干違いがあるので、よく似た別の絵が存在するのかも。

書籍/二十四孝諺解(にじゅうしこう げんかい) 1686(貞享03)

明日から「二十四孝諺解(にじゅうしこう げんかい)」に取り掛かります。「諺解」とはわかりやすく解説した本のことだそうです。解説書ですね。

この本の挿絵を参考にしている社寺彫刻も多そうです。

ARC古典籍ポータルデータベース arcBK01-0210 より 

 

中表紙というんでしょうか、最初のページの挿絵には聖人の出現を知らせるという麒麟鳳凰が登場しています。

書籍/御伽草子 二十四孝・24 陸績 (完)

出されたミカンを黙って持ち帰ろうとしたので袁術咎められる陸績。

国立国会図書館デジタルコレクションより

陸績
孝悌皆天性 人間六歳児 
袖中懐緑橘 遺母報含飴
陸績。六歳のとき。袁術といふ人の所へ行侍り。袁術陸績がために。
菓子にたちばなをいたせり。陸績これを三つとりて。袖にいれてかへるとて。
袁術に礼をいたすとて。たもとよりおとせり。袁術これをみて。陸績どのは。
おさなき人に似あはぬことと。いひ侍りければ。あまりに見ごとなるほどに。
いゑにかへり。ははにあたへんためなりと申しはんべり。袁術これをききて。
おさなきこころにて。かやうのこころづけ。古今まれ也と。ほめたるとなり。
さてこそ天下の人。かれがかうかうなることをしりたるとなり

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ミカンが三つ転がってます。

 

雨引観音の陸績。欄間彫刻のようにスペースが限られていて、しかも高い場所にあると単純化されがちですね。袁術と陸績、二人の間にミカンが一個。

 

ーーー 御伽草子13 二十四孝  終 ーーー

書籍/御伽草子 二十四孝・23 黄山谷

黄山谷。

国立国会図書館デジタルコレクションより

黄山
貴顕聞天下 平生孝事親 
汲泉涓溺器 婢妾豈無人
山谷は。宋の代の詩人なり。いまにいたりて。詩人の祖師といはるる人なり。
あまたつかひ人もおほく。またつまも有といへども。みづから母の大小便の。
うつはものをとりあつかひて。けがれたるときは。手づからこれをあらひて。
ははにあたへ。あさゆふよくつかへて。おこたる事なし。
されば一をもつて。万をしるなれは。そのほかのかうかう。をしはかられたるとて。
此人の孝義。天下にあらはれたるとなり。このさんこくのことは。よの人にかはりて。
なのたかきひとなり

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母親の下の世話もする黄山谷。汚水は自然に還します。

 

黄山谷の母。そんなの女の仕事でしょ!嫁にやらせなさいよ!と言ってるに違いありません。

 

以前博物館で見た黄山谷(黄庭堅)の書

 

千手院観音堂の黄山谷。洪水を巻き起こしそうです。

書籍/御伽草子 二十四孝・22 田真・田廣・田慶

親の遺した木を切って分けようとした田真・田廣・田慶の兄弟。

国立国会図書館デジタルコレクションより

田真・田廣・田慶
海底紫珊瑚 群芳総不如
春風花満樹 兄弟復同居 
此三人はきやうだいなり。おやにをくれてのち。おやのざいはうを
三つにわけてとれるが。庭前に紫荊樹とて。枝葉さかへ。
はなもさきみだれたる木一本あり。
これをも三つにわけてとるべしとて。夜もすがら三人せんぎしけるが。
よのすでにあけければ。木をきらんとて。木のもとへいたりければ。
きのふまでさかへたる木が。にはかにかれたり。田真これをみて。
さうもく(草木)こころありて。きりわかたんといへるをきいて。かれたり。
まことに人として。これをわきまへざるへしやとて。わかたずして
をきたれば。またふたたびもとのごとくさかへたるとなり

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兄弟が多いと相続は揉めがちですね。家とか土地とか。植木の相続はあまり聞いたことないですが。

 

上田市妙見寺の田真兄弟

 

書籍/御伽草子 二十四孝・21 張孝・張礼

お互いをかばって自分の命を悪者に差し出そうとする張孝・張礼の兄弟。

国立国会図書館デジタルコレクションより

張孝 張礼

偶値緑林児 代烹云痩肥
人皆有兄弟 張氏古今稀
張孝張礼は兄弟也。世間ききんの時に。八十餘の母を養へり。このみを
拾に行たれば。一人のたえつかれたる者来て。張礼を殺てくらはんと云り。
張礼云やうは。我老たる母をもてり。けふはいまだ食事を参らせざりつる程に。
少の暇を給れ。母に食物を参らせて。頓而(やがて)参らん。若此約束をたがへば。
家に来て。一族迄を殺給へと云て帰る。母に食事を進て。約束のごとくに。
彼者の所へ到けり。兄の張孝是を聞て。又跡より行て。盗(ぬすびと)にいへる様は。
我は張礼より肥たる程に。食するによかるべし。我を殺て。張礼を扶よと云り。
又張礼は。我初よりの約束也とて。死を争ければ。彼無道成者も。兄弟の孝義を
感じて。友に死を免。か様の兄弟古今希也とて。米二石塩一駄とあたへたる。
是をとりてかへり。いよいよ孝道をなせるとなり

 

※たえつかれたる者・・・息も絶え絶えに、死ぬほど疲れた飢えた者(御伽草子 下巻略注より)

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盗賊に対して、僕が約束破ったら一族みんな殺していいよ、と軽く誓う張礼。

 

僕のほうが太ってて美味しいよ、とアピールする兄の張孝。弟の張礼は「僕が約束したんだ」と兄の命を救おうとします。

「一人のたえつかれたる者」と書かれていますが、元気そうな悪者二人組です。

 

上田市妙見寺の張孝・張礼。天井画です。

悪者は三人に増えてます。

書籍/御伽草子 二十四孝・20 呉猛

親を守って、自分が蚊に喰われまくる呉猛

国立国会図書館デジタルコレクションより

呉猛
夏夜無帷帳 蚊多不敢揮 
恣渠膏血飽 免使入親闈 
呉猛は。八歳にして孝ある人なり。いゑまどしくして。
よろづこころにたらざりけり。さればなつになりけれども。
帷帳もなし。呉猛みづからおもへり。わがころもをぬぎて
おやにきせ。わが身をあらはにして蚊にくはせたらは。
蚊もわがみをくらい。おやをたすけんとおもひ。すなはち
いつも。よもすからはだかになり。わがみを蚊にくはせて。
おやのかたへ蚊のゆかぬやうにして。つかへたると也。
いとけなきもののかやうのかうかうはふしぎなりし
ことどもなり

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児童相談所が見たら指導を受けそうなお父さん、安眠中。呉猛は蚊の襲撃を受けて寝られそうにありません。

呉猛は親孝行(?)をしながら、蚊の繁殖にも一役買っています。いろいろ間違っていると思います。