桑の実を仕分けしていて助かった蔡順。
ARC古典籍ポータルデータベースより
蔡順
後漢の代の人也 汝南といふ所に住けり 父にはなれて
母をやしなふ 其頃。王莽といふもの乱をおこし天下乱て
飢饉なれは食じに。乏しけれは母のために桑の実をひろひし人なり
黒椹奉親闈 啼飢泪満衣
赤眉知孝順 牛米贈君帰
黒椹しんゐにほうずとは。こくじんは。くろき桑の実也。
しんゐにほうずとは母に奉るといふ心也
啼飢泪衣にみつとは。ききんにあふて母をはごくみ。かねて。
かなしむなみた袖をひたすといふ心也。
赤眉かうしゆんを知りとは。せきびは。えびす国の名なり。
此ものども蔡順が孝行をかんじたるといふ事なり。
牛米を君に。おくつて帰るとは。牛と米とをやる也 君とは
さいじゆんを。あがめて。えびすがいふ詞也。
帰るとは。えびすいづくともなくかへり去也
▲これ天のあたへなるへし 蔡順母を。やしないかねて桑の実を
ひろい。ふたつに。よりわけけるを。えびすともきたりていかにして。
わくるととへは。我一人の母を。もちたり 此熟したるをは母にあたへ。
熟せざるをは。我たべ候とかたれは。おそろしき。えひす共なれど。
此孝行をかんとく(感得?)して。米二斗と牛の股(もも)とをあたへけり。
よろこひかへりて。母にもあたへ我も食しけれども。一期のあいだ。
つきせさると也。誠に人のものをおさへはぎとる。えびすどもの孝の心を。
かむして(感じて)あたへけるは。ひとへに天のなせるなるへし
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カゴが二つ、お米、そして肉。肉は燻製にしてあるんでしょうかね。