父親の病気平癒を星に祈る庾 黔婁。
ARC古典籍ポータルデータベースより
庾黔婁
南斉の時の人也。セン陵県といふ所の官人になりて。此所にゆきけるか。
いまた十日にもならさるに。俄に。むなさはぎ。しければ父の煩給ふにやと。
官をすてて帰りければ、あんのごとく。父万事かぎり也
黔婁医師によしあしをとひけれは。病人の。ふんをなめて。みるに。
あまくにがくはよかるへしといふ。きんろう。なめてみれば。あぢはひ。
医師の。いひけるとは違てよろしからず。泪をながして。父の死せん事を。
かなしみ。北斗の星にいのりて。我 身がはりに。たたんと。きせひしける
程の孝行成人也
到縣未旬日 椿庭遘疾深
願将身代死 北(※塑)啓憂心
※塑ではなく望が正しいようです。
縣いたりいまだ旬日ならずとは。黔婁。せんりやうへ。いたりて。
いまだ日数もたたぬをいふ也。
椿庭疾深にあふとは。ちんていとは。父をいふ也。おもひの外なる。
おもき。わづらひがつきたると也。
願は身をもつて。死にかはらんとは。ねがはくは。我身を。みがはりに。
たてて父を。たすけたくおもふとなり孝行ふかき心たぐひなし。
北塑に憂心を申すとは。北さくとは。北斗のほしの事也。憂心をもうすとは。
父のやまひを。かなしむ。うれへの心をもうしあげて。天にいのり奉るといふ事也
▲誠にかやうに身にかへて父をおもふものあらんや
子曰 孝莫大於厳父と聖人の御心に相叶歟(あいかなふか)
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