二十四孝に会いに行く!

中国の親孝行な人たち・二十四孝に関するものを紹介していきます。

初頴日記故事・9 陸績






後漢の末に陸績 字は公紀といへる人 六歳の時九江郡の 袁術といへるものの家にいたりけるに 袁術橘を出してもてなす 陸績橘ふたつをふところに入けるが 帰らんとして礼をなさんとする時 ふところの橘地に落ちたり 袁術これを見て陸郎は人の客となりて橘を懐に入られしやとはづかしめければ 績ひざまづきこたへていへるは たちばなはわが母のうまれつきて好みたまへるものなれば 帰て母におくらんために ふところにせりといひければ 袁術大きに 奇とし感じけるとぞ
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親につかへて孝 兄につかへて悌あるはみな天よりうけたる性なり しかれどもその天性にかなふものすくなし あまたある人の中にて わつか六歳の児にして 橘をふところにして 母にをくり いとけなきとき乳をのみたる母の恩をむくはんとするはためしなき事にあらずやと也 陸績は博学の大儒にして天文算数あきらめざる所なし 呉の孫権につかへて高官となり 軍のことにあづかりながら 書をあらはしてその名を残したり