父を守るため虎に立ち向かう楊香。
ARC古典籍ポータルデータベースより
楊香
魯国の人也。十五のとし父と山中に行て飢たる虎にあひけり。
しかれども孝行の心ふかきによりておや子。ともに難をのがれし人也
深山逢白額 努力搏腥風
父子倶無恙 脱身飢口中
深山に白額にあふとは。はくがくは。しろきひたいといふ文字也
虎の事をいふ也 深山にてとらにゆきあふといふ事也
努力(とりき)して腥風をうつとは。とりきは。いかりたる事也。
せい風とは。とらの事也 楊香。いかりて。とらをおふていをかくいふ也
父子ともに。つつかなしとは楊香が孝行天につうじて。とらがおそれたるゆへ。
つつかなく。ありしといふ心也。人の身にかなしみなく。ゆたかなる事を。
つつかなしといふ也
脱身きこうのうちとは。飢口は。うへたる口といふ文字也。うへにおよひたる
虎が人を。とらんとせしに身を。のがれたるといふ心也。すでにおやこながら
虎の口の中に。いりたるやう也。あやうき所也 是をのがれたるは楊香孝行にして
虎に我身をあたへ父をたすけたまへと。天道に。きせいして。手をひろげ
虎にむかへは。いままで。たけくいかれる虎尾を。さげて。にげける也。
是楊香が。すがたの虎の目に。おそろしく。みゆるは天孝の心を。
かんじてはからひ給ふゆへ也
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虎が逃げ出したのは天の助けにより、虎の目には楊香が恐ろしい姿に見えたから、だそうです。
お父さんは我関せず。