唐夫人。
ARC古典籍ポータルデータベースより
唐夫人
崔南といふ人の妻なり。崔は姓也 名は琯といふ唐の博陵の人也
夫人。しうとめ長孫夫人年老て万(よろつ)食事歯に。かなはず。此ゆへに。
朝夕乳を。ふくませて。とぼしからぬやうにして。孝行をつくせし也
孝敬崔家婦 乳姑晨盥梳
此恩無以報 願得子孫如
孝敬さいかのふとは。かうけいは。しうとめに孝を。つくしうやまいをなす事也。
さいかのふとは。崔南がつまなるゆへかくいへり。
乳姑して。つとに。てあらひ。くしけづるとは しうとめに
つかうるていをいふ也。姑(こ)ににうしてとは。姑はしうとめといふ文字也
乳(にう)はちの事也
鶏はじめて鳴て。てあらひ。くちすすぎ。くしけつり。かんざしし。
身に香袋なとを入。しうと。しうとめの。前にゆきて。用事をきくを
婦(よめ)たるものの。作法とする也 くはしく礼記にあり。此夫人
かくのごとくにしうとめに。つかへ孝行をつくされたると。ほめたる也。
此恩もつて報する事なしとは。しうとめの。婦をほめたる詞也。
さてもさても孝行なる事かな。此おんはほうじても。ほうじ。つくされぬと。
かんるい(感涙)をなかしてよろこひたるをいふ也
願(ねがはく)は子孫かくのごとき事をえんとは我子孫にかくのごとき。
孝行なる婦(よめ)ありて。此唐夫人に。孝行をつくせかしと。
子や孫どもの中にてゆいごん。せられしといふ心也
▲誠に婦しうとめはことに中あしきものと。世のことわざにもいひならはし
けるに。此夫人のごとく。かうかうをつくし侍らは。など末はんしやう。
せさらんや。きせん。ばんみん是をまねふへし。あふくべし
ーーー