7人目の孝行者は呉猛。
呉猛ごまう
呉猛は八歳にして孝ある人なり。家まどしくして よろづ心に 足らざりけり。されば夏になりけれども帷帳もなし。呉猛自ら思へり。我衣を脱ぎて親に着せ 我が身はあらはにして 蚊にくはせたらば 蚊も我身を食らはば 親をたすけんと思ひ すなはち いつも夜もすがら裸になり 我身を蚊に食はせ 親の方へ 蚊の行ぬやうにして仕へたるとなり。いとけなきものの かやうに孝行は不思議なりしこと共なり。
まどし・・・貧しい。帷帳(いちょう)・・・とばり。垂れ絹。
お父さんの掛布団、呉猛の衣にしては大きいサイズ。呉猛は10匹以上の蚊に刺されています。さらに5匹の蚊が押し寄せてきています。お父さんはスヤスヤ安眠中。真似する良い子はいなかったことを期待します。