心残りもなく任務終了とばかりにあっけなく去っていく織姫。
『和漢廿四孝』(東北大学附属図書館所蔵) 出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100445689
董永(とうえい)
董永は後漢の人也
稚き時母におくれ 父とし老て貧きうなれば
その身 人にやとはれ わづかの賃銭をとりて孝行を尽しけるが
父死して葬ることあたはず
人にわが一生の身をかき入れとなし 銭をかりて そう礼をいとなみ
さてその家にいたらんとせし道にて美女にあいしに
御身の妻にならんといふ
董永さい三いなめども 聞ず
ぜひなく ともなひて主人のいへに至り
しさいをつぐれば 主人曰 汝が妻 絹三百疋おりたらは
暇をとらせんと也
かの女 日ならず織はたし ふうふ暇をもらひ帰る道にて
董永にむかひ われは天上の織姫也
坂(地ち?)に下りて汝が孝心を助しといひ捨去しとなん
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