話の分かる虎でよかったねー。楊香の後ろに父親がいるんだけれど、ごちゃごちゃしてわかりにくいのね。
『和漢廿四孝』(東北大学附属図書館所蔵) 出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100445689
楊香(やうきやう)
楊香は晋の代 魯国の人 楊豊がむすめ也
年十四の時 田園に出 粟をとらんとせしに
虎来りて父を引くはえゆかんとす
楊香女のことなれば すべきやうなし
されども日ごろ孝心ふかきものなれば
わが身に乕(とら)をすこしも怖れず
虎の平首にとりつき 父をたすけて
われをくらふべしとなげきければ
たけき無心の獣なれど この孝心に感じてや
楊香をはなし 猛き勢ひもくぢけけん
尾をたれて山のかたへにげさりけり
至孝の篤(あつき)にあらずんは
かかるふりよのわざはひ 虎口をのがれがたけんに
父子つつがなきことを得しも孝行の徳によるもの也
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