20番は丁蘭。綺麗な響きの名前だけど男性でしたー。
丁蘭ていらん
丁蘭は かだい(河内)の やわう(野王)といふ所の人なり。十五の年 母に後れ 長き別れを悲しみ 母の形を木像に作り 生ける人に仕へぬるごとくせり。丁蘭が妻 有る夜のことなるに 火をもって 木像の面を焦がしたれば 瘡のごとく腫れいで 膿流れて 二日を 過ごしぬれば 妻の女房 かしらの髪が 刀にて 切りたるやうになりて落ちたるほどに 驚きて詫び言をする間 丁蘭も奇特に思ひ 木像を大道へ移し置き 妻に三年詫び言をさせたれば 一夜のうちに 雨風の音して木像は 自ら うちへ帰りたりるなり。それよりして かりそめのことをも 木像の気色を伺ひたるとなり。かやうに 不思議なることの あるほどに 孝行を なしたるは たぐひ少なきことなるべし。
亡くなった母親に似せて作った木像に、生きているかのように仕えた丁蘭。奥さんは不満に思って木像を焦がし、そして祟り(?)に合います。ホラーです。外に出した像が嵐の夜に家に帰ってくる・・・ホラー以外の何物でもありません。
漢文帝と丁蘭。いつも区別つきにくいです。どちらも男性がお盆かお膳に食物を載せて運んでいます。丁蘭の後ろで何か運んでいるのは奥さんでしょうか。
この本の丁蘭の母の木像は等身大で、自然なポーズなのであまり木彫りには見えないです。丁蘭の母の木像が置かれているのは壇の上、小部屋のようなところなので、広さのある漢文帝の母の部屋とは違いますね。
漢文帝と丁蘭。社寺彫刻では「どっちかな~」と、しばしば判断に悩まされます。