老莱子。印刷が薄くてちょっとわかりにくいですが、老莱子が水の入った器をお盆に乗せて運ぶ途中、ひっくり返して水がこぼれ、泣きわめいているところのようです。
1819年 葛飾戴斗 二十四孝図会 The British Museum所蔵
老莱子
戯舞学嬌痴 春風動綵衣
双親開口笑 喜色満庭闈
老來子は年七十余までふたりの親をもち、孝行をつくし
身にうつくしき衣服をまとひ小児のごとくたはふれ舞あそび
二親の給事をして、わざとつまづきこけいとけなき時のごとく
なきわめきける、或はびん髷の白髪を黒染になしける故
人そのこころをたづねければ我七十に余りぬれば
年よりてかたちかれうるはしからざる故に、かかるありさまを
親の見玉はばわが子の年よりたるをさこそかなしく思ひ玉んことを
おそれ、又親たちも年寄たると思れざるやうにと答ける、
誠にかかる孝心は其わざ、たはれたるやうに聞人有共夫は
孝心にうとき人々なり、朝夕のことにさへかやうに心を尽す豈
一つとして心に叶はざることあらんや実に孝の至りなり
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「幼児の真似なんてふざけている、と思う人は孝心に疎い人」だそうです。昔からみんな「ふざけてる」と思ったんでしょうねー。
若く見せるため髪を黒く染めた人といえば斎藤別当実盛公。(妻沼聖天山)
なきわめく老莱子の姿を見たら一喝しそう。