父の病気が治るように北斗の星に祈る庾黔婁。
国立国会図書館デジタルコレクションより
到縣未旬日 椿庭逢疾深
願持身代死 北望啓憂心
庾黔婁(ゆきんらう)
庾黔婁は 南斉のときの人なり
孱陵といふ所の官人になつて すなはち孱陵県へ至りけるが
いまだ十日にもならざるが たちまちに むなさはぎしけるほどに
父の病みたまふかと思ひ 官を捨ててかへりければ
あんのごとく大にやめり
黔婁 医者によしあしをとひければ
医師 病者の糞をなめて見るに
あまくにがからばよかるべしとかたりければ
黔婁やすき事なりと なめて見ければ
あぢはいよからざりけるほどに 死せんことをかなしみ
ほくとの星にいのりかけて
身がはりにたたんことをいのりたるとなり
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