孟宗は幼くして父におくれ 一人の母を養へり 母年老いて常に病みいたはり 食の味はひもたびごとかはりければ よしなき物を望めり 冬のことなるに 竹の子をほしく思へり すなはち孟宗竹林に行き もとむるといへども などかたやすくうべき ひとへに天道の御あはれみを頼み奉るとて 祈りをかけて悲しみ竹によりそひけるところに にはかに大地開けて竹の子あまた出でける 大きに悦びすなはち取りて帰り あつものに作り母に与へ侍りければ これを食して其のまま病もいえて よはひをのべたり 是ひとへに孝行の深き心を感じて天道よりあたへたまへり