親思い、兄弟思いの張孝張礼。
国立国会図書館デジタルコレクションより
張孝張礼
偶値緑林児 代烹云痩肥
人皆有兄弟 張氏古今稀
張孝。張礼は。兄弟なり。世間飢饉の時に。八十余りの母を養へり。木の実を拾いに行きたれば。一人たへ疲れたる者来て。張礼を殺して。食らはんといへり。張礼云やう。我老いたる母を持てり。今日いまだ食を参らせさりつる程に。少の暇を給れ。母に食物を参らせて。やがて参らん。もしこの約束を違へは。家に来て一族まで殺し給へと云て帰り。母に食をすすめて。約束のごとく。彼の者の所へ至りけり。兄の張孝是を聞きて。また跡より行て云やうは。我は張礼よりこへたる程に食するによかるべし。我を殺して張礼をたすけよといへり。また張礼は初より約束なりとて。し(死)を争ひければ。かの。無道なる者も。兄弟の孝行を感じて。ともに死をゆるし。かやうの兄弟。古今まれなりとて。米二石。塩一駄をあたへたり。是を取りて帰り。いよいよ孝行の道をなせると也
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