蚊に身体中刺されて大変なことになっていても耐え忍ぶ呉猛。
画像は「ARC古典籍ポータルデータベース」より
呉猛 恣蚊飽血
呉猛は。いづれの時の人といふ事を詳にせず。八才にして。孝行の名。世に高し。其家もとより貧く。夏の比。蚊帳をたるる事だになければ。父母の蚊になやみ給はん事をかなしみ。衣を脱て。父母にきせまゐらせ。赤裸になり。かたはらにうづくまり。通夜口の中にて唱へ云けるは。蟲類たりとも心あらば。父母を噬事をゆるせよかし。父母は年老て血気うすく。我はやうやうにみちさかんなれば。あくまで我をくらふべしとて。ちひさき身の。はだへも見(へ)ぬまで群がれども。身を動かしては。父母の方へ飛び行んを恐れ。ほしいままに蚊にあたへけり。わづか八才にて。かくまで心を用る事。ありがたくあはれなりけり。今此伝をよみ。此の絵を見て。涙を流さざるものは。其人必ず不孝の者なるべし
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この話を読んで涙を流さない人は親不孝者だそうです。でも泣けないなあ。
文中では「父母」がいたことになってますが、挿絵では父親だけ寝てます。彫刻でもいつも寝てるのは父親ですよね。わが子が裸で寝て蚊に刺されまくりで、その横で母親が熟睡してたらさすがに昔も違和感あったでしょう。
成田山釈迦堂の呉猛。左右反転してますね。
手前に大きな木があるところも一緒。
安眠できない呉猛。身体によくない親孝行。