二十四孝に会いに行く!

中国の親孝行な人たち・二十四孝に関するものを紹介していきます。

漢土二十四孝伝・9 閔損(びんそん)


閔損は周の世の人。孔子の御弟子にて字を子騫(しけん)といふ。十哲の一人なり。母は早く世を去りその後の妻を迎へけるに後の妻二人の子を持ちて継子の閔子騫をいたく憎みければ閔子騫は孝心深くこれを露ばかりも恨み事せず継母に仕へしが、継母冬の衣服に葦の花を入れて閔子騫に着せ、我が実の子にはまことの綿を入れて着せ万事邪険にふるまひける。


あるとき父、閔子騫に車を引かせけるに、葦の花を入れたる着類ゆへ冷えて震ひ、むながひ(牛や馬の首にかける革のひも)を取り外しぬ。父これを見ていかなれば人並みの衣服を着ながら凍へるやと問へども閔子騫これを隠して言わざる故、父、さらば継母なんぞ仔細のあるべしとて閔子騫の着物を見るに葦の花を入れてありければ父大いに怒り、継母を離別せんとて妻を(よ)び罵りて言ひけるは、汝何とてかくまでに継子につらきや。われ今まで汝が悪心を知らざりしも我が子ながら子騫の孝なるが故なり。すぐに家を立ち去るべしと怒りけるに閔子騫父の袂にすがり、泣き悲しみて申すよう、母君ましませばこそ二人の弟も冷へ凍えず。我が身一人はさらに苦しからずと息巻ける。父これに従ひて妻を去るをや(め)ぬ。


継母もまた閔子騫が志に感じ、これまでの過ちを悔ひて心を翻し、後には実子の如く愛したりとなん。これまったく閔子騫が孝心深き故に継母も悪を捨てて善に進みたるなり。

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【あらすじ】
真冬、我が子にはぬくぬく暖かい服、けれど継子の閔損には薄着を着せる意地悪な継母。それを知って激怒した父親は継母を追いだそうとしましたが、閔損は継母を最後までかばいました。閔損の孝心に冷たい継母もついに心を改めてくれたのでした。

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A:追い出す場面のモチーフ。
1.閔損
2.父
3.子ども二人を連れた継母

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B:妻を追い出す前の場面。閔損が薄着を着せられて凍えていたことに気づくところ。
モチーフ。
1.車を曳く閔損
2.父
3.子ども二人を連れた継母


継母は自分の産んだ子には綿入れの暖かい着物、閔損には芦の花の入った寒い着物を着せました。寒くて震えた閔損は綱をちゃんと持てずに手離してしまい、不審に思った父が妻の意地悪さに気づきます。